2018年01月08日

『火を熾す』(ジャック・ロンドン著、柴田元幸訳/スイッチ・パブリッシング)読了

ジャック・ロンドンは一八七六年に生まれ、
一九一六年40歳で亡くなった短命な作家ですが、
アメリカでは国民的な人気を博したそうです。
代表作は『野性の呼び声』(深町真理子訳/光文社)。
アメリカの裕福な家庭で大切にされていた大型犬のバックが
使用人の一人に盗み出され、カナダ・アラスカの国境地帯の橇犬として売り飛ばされる
数奇な運命を描いていて、どきどきハラハラワクワクの傑作小説。
短編小説の書き手としては200以上の作品を残していて
今回読んだ『火を熾す』も短編小説集。

翻訳界のスター・柴田元幸さんが選んだ9本の短編集が収められた『火を熾す』。
あとがきによると〈作風の多様性〉を重視したとのこと。
その言葉通り、バラエティに富んだ9本で
内容も民間伝承、スポーツ小説、革命小説、SFまであり
その結末の付け方も、一方は救いあり、もう一方は救いなし。

二〇〇八年に刊行された本なのでAmazonでは在庫なしになっているのが残念ですが
そういう私も図書館で借りて読んだので興味を持った人はぜひ。

表題作の「火を熾す」。
カナダ・アラスカ地帯に流れるユーコン川に沿って
一人の男が仲間の待つ採鉱地に向かっています。
季節は太陽の出ない「極夜」。
一人、遠回りして採鉱地に向かう男は想像力が欠けていて
零下50℃の世界ではそれは完全に命取り。
そんな彼に、一匹の犬がついてきます。
犬の目的は人間が熾す火。
人といれば暖かい火のお相伴にあずかれる。そう期待します。
さて、−50℃の世界とはどんな世界なのか。
エベレストの山頂付近だって、そこまで寒くはありません。
最近、ネパール政府は死亡事故を減らすためにエベレスト登頂の単独行を禁止しましたが
もっと寒い地帯をたった一人で行く男。
そして彼は寒さのスペシャリストでは全然ない。
危機に置かれた男の理性と動揺、犬のクールな視点がすばらしい小説。

「火を熾す」と対になっている(と思う)「生への執着」。
同じくアラスカ地帯。二人組で砂金を運んでいた男。
足をくじいてしまったところ、相方に見捨てられて置き去りにされる。
この主人公、こそこそ二人で砂金を運んでるなんて
犯罪者なんだろうなあとはうっすら思うのですが
彼の〈生への執着〉はすさまじく、敬意を抱きます。
生きた亡者のような姿になり果て、
やがて狼に食い荒らされた人骨を発見しますが
人としてのぎりぎりの尊厳を保ったところにもホッとします。
彼は「火を熾す」の主人公とは違い、自分の持っているマッチを数え、
3つに分け、それぞれ油紙にくるみます。
火の大切さをよくよく理解している様子です。
どんなに惨めな姿になっても、生きようとする意思は尊い。

ほかの七編は駆け足で紹介。

「メキシコ人」はメキシコ革命より前の話。
無口な18歳のリベラは革命の闘士。
革命小説なんだな、と思っていたら途中からめっちゃ面白いボクシング小説に変化。

「水の子」は老漁師が語る神話と伝承。
ハワイの神を語り、ハワイの歌を歌う。
サメを出し抜きロブスターを獲るのは〈水の子〉。

「生の掟」はカナダ、クロンダイクに生きる部族の「楢山節考」。
老コスクーシュはかつての族長。
遊牧民の一族は、老コスクーシュを置き去りにして旅立つ。

「影と閃光」はサイエンス・フィクション。
好敵手とはなれなかった、二人の天才の子供っぽさが
物語におかしみを与えている。

「戦争」は何かの戦争に従事している偵察の少年が主人公。
ある日孤独に偵察を続けていると、ショウガ色のひげの男を見つける。
戦争の無情さを淡々と語る物語。

「一枚のステーキ」はベテランのボクシング選手が主人公。
プロスポーツ選手が老いていく悲しみというのは
今でもそんなに変わっていないように思う。

「世界が若かったとき」はとある会社社長の館にいる、古代人の物語。
社長の男は古代人に悩まされるが、ある事件があり、ついに去って行く。
社長は平和になったが、読者の私は去って行った古代人を惜しんでしまう。
posted by さら at 08:40| Comment(0) | 今月読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月09日

12月後半の購入記録

『シャクルトンの大漂流』
(ウィリアム・グリル著、千葉茂樹訳/岩波書店)
2160円

『その雪と血を』
(ジョー・ネスボ著、鈴木恵訳/早川書房)
1361円

『CanCam2017年2月号』
(小学館)
720円

『山と渓谷 2017年1月号』
(山と渓谷社)
1200円

『シャクルトンの大漂流』は、実話を絵本化したものです。著者のウィリアム・グリルはこの作品でデビューし、一年間にイギリスで出版された特に優れた作家に贈られる、ケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。
『CanCam』は自撮りライトのために興味本位で購入。かなり眩しいので緊急用にもいいかもw
『山と渓谷』は特集が「スキルアップに役立つ「山」の新常識」というのに惹かれ購入。今年はアルプスの高山地帯に入ってみたいです。

12月一ヶ月の購入記録をつけてきましたが、合計額は18569円でした。
予想額の2倍使ってました。これは12月で冬休みがあるから財布のひもが緩んでしまったと思いたい。
買ったものをどれくらい読んでいるのか、ですが大体手をつけていますね。
伊集院光の映画の本は、読んで、観て、また読んで完結するものなのでまだほとんど読めてません。
ただ、ラジオのほうを聴いていたので3分の2は知っている内容です。
まだ20ページくらいしか手をつけていないのが『鳥の巣』です。
シャーリィ・ジャクスンは絶対に面白いので、近日中に読む予定。
posted by さら at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月17日

161215購入記録

『本の雑誌 2017年1月号』
(本の雑誌社)
840円

『ブルータス 2017年1月1・15日号』
(マガジンハウス)
680円

本の雑誌は久々に購入。
この号から「新刊めったくたガイド」を担当する北村浩子さんは
FMヨコハマで毎週金曜日に本を紹介(books A to Z)してるのですが
紹介される本はどれもとても魅力的に聞こえます。
本の力と紹介の力、両方が素晴らしいです。

ブルータスは特集が「危険な読書」。
とても評判がいいので買ってみました。
ゆっくりのんびりしながら読みたいです。
posted by さら at 17:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月11日

161210購入記録

『すべての見えない光』
(アンソニー・ドーア著、藤井光訳/新潮クレスト・ブックス)
2770円

2015年度ピューリッツァー賞受賞作。
posted by さら at 11:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月10日

161207購入記録

『静粛に、天才只今読書中!』3〜11巻 Kindle版
(倉多江美/コミックトム)
2916円

『山と食欲と私』1〜3巻 Kindle版
(信濃川日出雄/新潮社)
1512円

両作品とも漫画です。
『静粛に、天才只今読書中!』は2巻までKindle版で読んでいました。
冬休み中に読みたいなと思って全巻買いました。
『山と食欲と私』は自分が山好きで、漫画好きの友人が高評価していたので。

以上、JALのマイレージをAmazonポイントに替えたために
気が大きくなって大人買い。
posted by さら at 14:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする